2026年1〜2月、中国貿易総額、前年比18%超増|多極化する世界貿易、「対米減少と新興国増」

年が明けてわずか2カ月で、中国の貿易総額は7.73兆元を超えた。前年同期比18.3%増という数値は多くの人の想定を上回る数字です。どの国と、何を、どのような取引を行ったのでしょうか?構造的な変化の中に、2026年の世界経済の潮流が凝縮が隠れているのかもしれません。

2026年1〜2月の中国貿易統計概観

中国税関総署が公表した2026年1〜2月の貨物貿易データは、力強い数字を示した。

輸出入総額は7.73兆元(前年同期比+18.3%)。輸出は4.62兆元(+19.2%)、輸入は3.11兆元(+17.1%)と、輸出が輸入をやや上回るペースで拡大した。貿易方式別に見ると、一般貿易(+13.5%)を大きく上回る形で、保税物流が+36.9%と突出した伸びを示している点は、クロスボーダーEC(越境EC)や精密部品の中継取引が活発化していることを示唆する。加工貿易も+19.3%と底堅い。

CHART 01 貿易方式別 前年比増減率(2026年1〜2月)
一般貿易
+13.5%
4.78兆元
加工貿易
+19.3%
1.43兆元
保税物流
+36.9%
1.24兆元
総計
+18.3%
7.73兆元
出典:中国税関総署(2026年3月) ※最大値40%基準でスケール表示

貿易相手国の変化「ASEAN・欧州・一帯一路の成長」

相手国・地域別の統計が、今回のデータで特に注目に値する。

ASEANとの貿易総額は1.24兆元(+20.3%)最大規模の伸びを記録。EUとの貿易も9,989億元(+19.9%)と、堅調に拡大している。一帯一路構成国との貿易総額は4.02兆元(+20.0%)と、全体平均(+18.3%)を上回るペースで伸長しており、中国の貿易ネットワークが多方面に広がっていることが数値からも読み取れる。トランプ政権発足以降、一対一路が伸びている印象だ。

一方、対米国の貿易総額は6,097億元(−16.9%)と前年を下回った。2025年に激化した米中間の関税交渉の影響が数字に現れた形だ。ただし、これを単純な「後退」と見るよりも、ASEAN・欧州・一帯一路との貿易が拡大するなかでの相対的な変化として捉えるほうが、実態に即した理解といえる。アメリカによる中国外しをうまく乗り切った形だ。

CHART 02 主要貿易相手国・地域別 前年比増減率(2026年1〜2月)
一帯一路
+20.0%
4.02兆元
ASEAN
+20.3%
1.24兆元
EU
+19.9%
9,989億元
米国
−16.9%
6,097億元
前年比増加
前年比減少
出典:中国税関総署(2026年3月) ※増加はmax+30%、減少はmax−30%基準でスケール表示

輸出を牽引する民間企業とハイテク産業

外貿主体の内訳を見ると、民営企業の輸出入総額は4.51兆元(+22.8%)と、外商投資企業(+15.3%)・国有企業(+7.4%)を上回る伸びを示した。かつて外資系合弁企業が中心を担っていた中国の輸出産業が、民営のハイテク企業群を主役とする構造へと変化していることが、統計の上でも明確になっている。

商品別では、機電製品の輸出が2.89兆元(+24.3%)と全体をリードした。EVや通信インフラ、半導体関連機器など、付加価値の高い製品群が輸出全体の比率を高めている。労働集約型製品(+15.6%)や農産品(+9.7%)も着実な伸びを示しており、輸出の裾野の広さも確認できる。

輸入面では、機電製品(+21.3%)に加え、鉄鉱石(+10%、2.1億トン)・原油(+15.8%、9,693万トン)と基礎資源の取り込みも拡大しており、製造業・エネルギー分野の旺盛な需要が続いていることが読み取れる。

CHART 03 主要輸出入品目 前年比増減率(2026年1〜2月)
輸出
輸入
▍輸出品目
+24.3% 機電製品
2.89兆元
+15.6% 労働集約型
7,027億元
+9.7% 農産品
1,200億元
▍輸入品目
+21.3% 機電製品
1.21兆元
+10.0% 鉄鉱石
2.1億トン
+15.8% 原油
9,693万トン
出典:中国税関総署(2026年3月) ※最大値30%基準でスケール表示

全人代が示した2026年の経済方針、成長の「質」を重視中

2026年3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)では、李強首相が2026年の経済成長率目標を「4.5〜5%」と発表されている。

成長率目標は例年より引き下げられたものの、取り組みのなかでより良い結果を目指して努力するとの考えも同時に示されており、目標値の変更が「後退」を意味するわけではないとの主張だ。むしろ注目すべきは、重点業務の筆頭に「強大な国内市場の整備」が据えられ、消費押し上げ特別行動の推進、所得向上、サービス・文化・観光・健康分野の潜在需要喚起が掲げられた点だ。「どれだけ速く成長するか」から「どのような成長を実現するか」へという、経済政策への意欲が示されている。

財政面では、一般公共予算の支出規模が初の30兆元に達し、超長期特別国債1.3兆元、地方政府専用債券4.4兆元が計上された。消費財の買い替え促進には超長期特別国債から2,500億元が投入される方針で、内需喚起への積極姿勢は数字にも表れている。

CHART 04 実質GDP成長率と政府目標の推移(2020〜2026年)
政府目標
実績値(推定含む)
8% 6% 4% 2% 0% 4.5〜5% 2.3 8.1 3.0 5.2 5.0 5.0 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 目標 なし
出典:中国国家統計局 / 全人代政府活動報告(各年) ※2025年・2026年は推定・目標値を含む

「第15次5カ年計画」2030年に向けた中国の設計図

2026〜2030年の戦略目標を定める第15次5カ年計画では、「高質量発展」「内需拡大」「共同富裕」「発展と安全の統合」の大きく4課題が重点戦略として設定(一部再設定)された。

産業政策の具体像として、集積回路・航空宇宙・バイオ医薬・低空経済などの新興基幹産業の育成に加え、量子技術・エンボディドAI・ブレイン・マシン・インターフェース・6Gといった未来産業の育成も盛り込まれた。研究開発費は年平均7%以上の増加、デジタル経済の中核産業の対GDP比を12.5%に高める目標も設定されており、技術立国への投資姿勢が明確だ。

対外開放の面では、付加価値通信・バイオテクノロジー・外資/独資による病院設立許可などの領域で試験的開放をさらに進めるほか、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)への加入交渉を積極的に推進するとした。貿易データに示された多角化の方向性と、この開放戦略は一致している。

CHART 05 第15次5カ年計画(2026〜2030年)主要数値目標
分野指標目標値・方針分類
経済成長実質GDP成長率(2026年)4.5〜5.0%年次
技術・イノベーション研究開発費(R&D)増加率年平均 +7%以上5年
デジタル経済デジタル経済中核産業の対GDP比12.5%5年
財政一般公共予算支出規模初の30兆元超年次
財政超長期特別国債1.3兆元(消費財買替に2,500億元)年次
財政地方政府専用債券4.4兆元年次
新興産業集積回路・航空宇宙・バイオ医薬・低空経済基幹産業として重点育成NEW
未来産業量子技術・エンボディドAI・6G・BCI国家戦略として推進NEW
対外開放CPTPP加入交渉積極的に推進外交
対外開放付加価値通信・外資独資病院等試験的開放を拡大外交
指標目標値・方針
GDP成長率(2026)4.5〜5.0%
R&D費増加率年平均 +7%以上
デジタル経済比率対GDP 12.5%
一般予算支出初の30兆元超
超長期特別国債1.3兆元
新興産業集積回路・AI・バイオ等
CPTPP加入積極推進
出典:全国人民代表大会 政府活動報告・第15次5カ年計画綱要(2026年3月)

まとめ:データが示す2026年の中国経済は?

2026年1〜2月の貿易データは、非常に短い期間のデータではあるが、中国経済の現在地を多面的に示している。貿易総額の18%超増という数値、ASEAN・欧州・一帯一路諸国との取引拡大、民営企業と機電産業による輸出牽引。これらは、世界の貿易地図の上で中国が「担う、担おうとする、担わせられようとされている」役割の変化を映し出している。

同時に全人代では、数値目標を幅のある設定に改め、内需拡大・産業高度化・対外開放という三つの柱を据えた中長期の方針が示された。「速さ」より「質」を重視する経済運営への移行は、今回の統計データと政策方針の両面から、一つの方向性として確認できる。

世界第二の経済圏を建設しようとする中国が2030年に向けてどのような成長モデルを描くのか。2月末からのイラン情勢混乱に伴う石油価格高騰から次期以降のデータでは悪化が予想される。しかし、これからの中国経済を「欺瞞」や「崩壊」というような軽薄な言葉で言及するのは危険だろう。

カテゴリ: 経済・金融・投資
この記事を書いた人

Seita Namba

イグナイトbiz 編集長