乱高下する原油価格、3月10日にかけて急落
直近まで急騰を続けていた原油価格が、3月10日本日にかけて急落に転じました。エネルギー市場は混乱が続くイラン情勢の中で、極めて高いボラティリティを見せており、世界経済への影響が注視されています。
これまでの原油価格急騰は、中東情勢の緊迫化による供給途絶リスクが主導していました。しかし、直近の「戦争終結の兆し」と「供給不安の緩和」を示す複数の思惑により、市場は急速な売り戻しの展開となっていると考えられます。
主要な要因と、最新の市場動向をお届けします。
WTI原油価格推移と主要イベント(2/27〜3/10)
2月27日 〜 2月28日
イランへの攻撃・地政学的リスクの顕在化
3月1日 〜 3月8日
原油価格急騰ピーク($115付近)
3月9日 〜 3月10日(本日)
供給不安後退による急落($86付近)
原油価格の揺り戻しを引き起こした3つの主要因
これまでの原油価格急騰は、中東情勢の緊迫化による地政学的リスクが主導していました。しかし、直近の複数の出来事により供給不安が後退し、市場は急速な売り戻しの展開となっています。
1. トランプ米大統領による「戦争終結」の示唆
今回の価格急落の最大の引き金となったのは、トランプ大統領による発言です。3月9日、大統領はインタビューにて「イラン戦争はほぼ完全に終結している」と述べ、爆撃作戦の終了が近いことを示唆しました。これにより、市場が最も恐れていた「戦争の長期化」というシナリオが後退したという印象を与え、長期化シナリオを織り込んだポジションの解消が進んだと考えられます。
2. ギリシャ原油タンカーのホルムズ海峡通航成功
最大の焦点であった中東の原油輸送ルートにおいて、3月10日、ギリシャのダイナコム社が運航する大型タンカー「シェンロン」が、位置情報の信号を切った状態でホルムズ海峡の通航に成功したことが報じられました。
最大の焦点であった中東の原油輸送ルートにおいて、イランによる封鎖が事実上解除されつつあります。ホルムズ海峡の封鎖を可能にするだけの能力をイランが喪失していることを示唆する出来事です。世界の石油供給の要衝であるホルムズ海峡の封鎖が、最大の懸念材料です。
依然、ほとんどの船はホルムズ海峡の通行を控えているものの、世界の石油供給の要衝である同海峡において、民間船の通航が確認されたことは、供給途絶リスクに対する市場の警戒感を大きく和らげたと考えられます。
3. G7による石油備蓄共同放出への準備

供給不安の緩和に拍車をかけたのが、主要7カ国(G7)の動向です。
主要7カ国(G7)は、エネルギー価格の高騰による世界的なインフレを阻止するため、戦略石油備蓄(SPR)の協調放出に向けた協議を継続しています。一部の国で準備が整っていないとの報道もありますが、主要国が歩調を合わせて市場介入を検討しているという事実そのものが、投機的な買いポジションの解消を加速させました。
4. 日本政府要人による備蓄放出準備の言及
G7の動きと連動する形で、日本国内でも要人による具体的な発言が見られています。
原油価格の高騰を受け、G7 財務相は9日、オンライン会合にて、石油備蓄の協調放出について議論。米イスラエルとイランによる攻撃の応酬で、原油輸送の要衝ホルムズ海峡が事実上封鎖。戦闘長期化の懸念から相場が急伸する中、緊急に協議し、各国が連携して必要な対応を取ることを確認したと報じられています。必要な対応には石油備蓄放出も視野に入っていると捉えることができます。
日本から出席した片山さつき財務相は「石油備蓄放出など必要な対応を講じることで一致した」との主旨を述べています。
日本国内でも具体的なアクションが市場を動かしました。経済産業省が国内の石油備蓄基地に対し、国家備蓄の放出に向けた準備を指示したことがすでに明らかになっています。
今後の見通しと市場への影響
3月10日の急落は、トランプ大統領による発言と、供給リスクの後退、各国政府の市場介入姿勢という「需給両面での安心感」がもたらしたものだと考えられます。しかし、中東情勢の根本的な解決に至ったわけではなく、依然原油価格はイラン攻撃前と比べ高値圏。今後の動向次第では再び価格が反転するリスクも残されています。
イランの指導者として、殺害されたハメネイ師の次男であるモジタバ・ハメネイ師が選出されたことが明らかになっています。同氏は対米強硬を示すイラン革命防衛隊に近い人物であると知られています。情勢が落ち着くか不透明です。
当面は、要人の発言、G7による備蓄放出の具体的な規模や時期、そして中東地域の最新ニュースに市場が大きく反応する展開が予想されます。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。投資に関する最終判断はご自身の責任において行ってください。
