核融合エネルギーの商業化を目指す日本のスタートアップ、ヘリカルフュージョンが2026年2月、大きなマイルストーンに到達した。統合実証装置「Helix HARUKA(ヘリックス・ハルカ)」の中核部品である高温超電導(HTS)コイルを製造するための専用巻線機が完成したとのプレスリリースが2026年2月5日に出された。製造装置は富山県の杉野機械と共同で開発されたもので、現在は搬送を待っている状態だ。
スパイラル形状が抱えてきた製造の壁
Helical Fusionが開発中の核融合炉は「ヘリカル・ステラレーター」と呼ばれる方式だ。プラズマをらせん状のコイルで閉じ込めるこのアーキテクチャは、安定した連続運転に向いているとされる一方、製造の難しさが長年の課題として知られてきた。コイルの形状がそもそも複雑なのだ。
その壁を破る突破口になったのが、同社が独自開発した「高温超電導ケーブル」だ。曲げや巻き取りがしやすい設計になっており、2025年10月に実証に成功したことを発表している。今回完成した製造機は、このケーブルをらせん状のコイルに仕上げるための専用装置で、ヘリカルフュージョンのコンセプトをもとに杉野機械が設計・開発した世界で1台だけの機械となった。
「Helix HARUKA」から「Helix KANATA」へ
同社が掲げる「Helixプログラム」のロードマップはこうなっている。2030年頃までに高温超電導磁石と統合ブランケット/ダイバータの単体実証を完了し、その後の2030年代に「Helix HARUKA」で統合実証を行う。そこで得た知見をもとに、商業発電炉の第1号「Helix KANATA」で世界初の商業核融合発電を実現するという流れだ。
商業炉に求められる要件として同社が挙げているのは、核融合反応の実現に加えて、プラント境界を超えた正味の電力供給、365日24時間の安定運転、そして実用的なメンテナンス性の3点だ。今回の製造機完成は、そのうち核融合炉の製造可能性という根本的な課題に正面から答えるものだといえる。
老舗ものづくり企業との分業
今回のパートナーである杉野機械は1936年創業の機械メーカーで、高圧ジェット洗浄装置や超高圧ウォータージェット切断機、原子力関連設備など、幅広い装置を手がけている。核融合のような先端分野でも、こうした日本の製造業の技術蓄積が実際に使われているのは、よく考えると面白い。
装置は今後、Helix HARUKAの実証サイトへ搬送され、2026年中に組み立てが始まる予定だ。ヘリカルフュージョンはこれまでに累計60億円の資金を調達しており、2030年代の商業運転開始を目標に据えている。
コイル製造機という地味に聞こえるマイルストーンだが、「炉を作る能力があるか?」という問いに実物で答えたという点で、研究段階から製造段階への移行を示す一歩だ。ステラレーター型の核融合炉がどこまで進めるのか、引き続き注目したい。
