生成AI、うちも入れたけど微妙…の正体。9割が感じた”期待外れ”の理由と、22%の勝ち組が違うこと

AI導入は急速に進んだが、「もう使いこなせてる」は意外と少ないかもしれない。

「進んでいる企業」のはずが、9割が躓いていた

まさかこうなるとは、というのが正直な感想だ。

Sansanが2026年2月に実施した調査は、対象がいわゆる“先行組”に限定されている。すでに生成AIを業務で活用している企業の、導入・活用推進に関わる役員・管理職・担当者1,077名だ。つまり「これからどうしよう」という企業の話ではなく、すでに走り出している企業のリアルな内幕である。

そこから出てきた数字が、なかなか衝撃的だった。

1年以内の導入が72.5%──先行組の中でも”超最近組”が主流

まず導入時期から見てみよう。

導入時期割合
1カ月以内7.1%
3カ月以内16.5%
半年以内26.4%
1年以内(合計)72.5%
1年超22.5%

先行導入企業の中でも、72.5%が1年以内という”新参者”だ。半年以内に絞ると4人に1人超。生成AI活用の波が、いかに急速に広がったかがわかる。

ベテラン勢(1年超の22.5%)はまだ少数派。多くの「先行組」企業も、実はここ1年で慌てて乗り込んできた組だったわけだ。

誰が旗を振っているのか──経営主導が最多

導入のきっかけで最も多かった回答は「経営・会社方針での導入」が44.6%。先行導入企業においては、トップダウンで動いたケースが4割超を占める。

「社長が『やれ』と言った」パターンが最多とはいえ、現場や部門から火がついたボトムアップ型も根強く存在する。「ChatGPTを使ったら劇的に楽になった」という社員の声が組織を動かした例も、決して少なくない。

いずれにせよ、先行組の企業では経営レベルでAIが議題に上がっているという点は共通している。

経営インパクトの現実──売上貢献を実感できているのは2割以下

「先行組なら成果も出ているはず」と思いたいところだが、ここが今回の調査で最も直視すべき数字だ。

受注率・単価向上や売上貢献を実感しているのはわずか18.9%。新規事業・ビジネスモデル変革への貢献は16.6%、競合優位性の構築に至っては11.1%。

すでに導入・活用を推進している企業の担当者ですら、経営インパクトを実感できているのは2割に満たない。大多数はまだ「業務効率化・コスト削減」の段階にとどまっているのが実態だ。

これは失望すべき数字というより、「効率化の先にある成果はまだこれから取りにいける」と読む方が建設的だろう。ただし、「導入すれば自然と売上が上がる」という期待は、データが明確に否定しているのが現状だ。

上司・経営層への提案は「段階論」で組み立てよ

ROI提案の現実的な設計はこうだ。

フェーズ1(3〜6カ月):業務効率化で数字を作る 議事録・要約の自動化、資料ドラフト生成など、効果が可視化しやすい業務から着手する。「週○時間削減 × 人件費」で金額換算し、小さな成功を積み重ねる。

フェーズ2(6カ月〜1年):トップラインへの貢献を狙う 営業支援・顧客対応品質の向上など、売上に関わる領域へ展開する。ここで初めて「18.9%の実感組」に近づける。

「便利になります」ではなく「6カ月で効率化の効果を検証し、1年後に売上貢献フェーズへ移行します」という段階論の方が、経営層には圧倒的にウケがいいだろう。

これが本音だ!先行組の9割が「期待外れ」を経験している

ここが今回の調査の核心だ。

AIの期待外れな動作を経験したことがあるか?という問いに、先行導入企業の担当者の90.4%が「ある」と回答した。

経験の頻度割合
頻繁にある32.6%
ときどきある57.8%
合計90.4%

「使えると思ったのに」という経験、先行組でもほぼ全員がしている。その理由(複数回答)がこちらだ。

期待外れの理由割合
回答の裏付け確認が必要59.1%
事実と異なる回答(ハルシネーション)43.5%
公開情報以上の回答が得られない41.0%
情報が古い39.3%
自社活動情報に基づく回答が得られない27.5%

上位を見ると構造的な問題が透けて見える。AIは公開情報をもとに「それっぽい答え」を出すが、裏付けが弱く、自社固有の情報には対応できない。この限界が、先行組でも解消できていないということだ。

「AIが使えない」のではなく、「AIの特性に合った使い方の設計ができていない」問題である。ツールへの過信と、運用設計の甘さが同時に起きている。

セキュリティより深刻な「データ整備」問題

導入後の課題として語られがちなのはセキュリティだが、調査が示す実態はそれより根深い問題を指している。

「AIが社内情報を把握できれば成果が変わると思う」と答えた担当者は90.7%。しかし、AIが読み取れる状態に社内データが完璧に整備されているのはわずか22.2%だ。

「もっと使えるはずなのに」と感じながら、その土台となるデータ整備が追いついていない。先ほどの「自社活動情報に基づく回答が得られない(27.5%)」という不満は、まさにここから来ている。先行組でさえ5社に1社しかクリアできていない課題が、データ整備だ。

正直なところ、いまAI導入の波に乗れている企業は、すでにかつてのDX導入ブームでデータの構造化ができているものだと考えていたので、意外だった。

実務で押さえておきたいポイント

① データ整備をAI活用と並行して進める 社内ドキュメントの整理・デジタル化、ナレッジベースの構築はAI活用の土台だ。「とりあえず導入してから考える」では、90.7%が感じている「もっとできるはず」という期待が永遠に満たされない。

② ハルシネーション対処を運用フローに組み込む 「AIの回答は必ず裏付けを確認する」というフローを最初から設計しておく。59.1%が「裏付け確認が必要」と感じているのだから、これは例外対応ではなく標準プロセスとして位置づけるべきだ。

③ セキュリティは「禁止」より「ルール化」で 個人情報・未公開財務情報・取引先の機密情報をAIに入力するリスクは本物だ。ただし過度な制限は「野良AI利用」会社に内緒で個人アカウントを使う行動を誘発する。法人向けエンタープライズプランの活用と、明確な利用ガイドラインの整備がセットで必要だ。

「自社はどこにいるか?」チェックリスト

少しおこがましいが、イグナイトbiz編集部でチェックリストを作成してみた。先行導入企業の実態と照らし合わせてみてほしい。

  • [ ] 生成AIツールの公式利用が社内で認められている
  • [ ] 経営層がAI活用を明言・支持している
  • [ ] 利用に関するガイドラインや規定が存在する
  • [ ] AIが読み取れる形で社内データが整備されている
  • [ ] AIの誤回答・ハルシネーションへの対処フローがある
  • [ ] 業務効率化の効果を数字で把握したことがある
  • [ ] 売上・受注など経営インパクトへの展開計画がある

5つ以上チェックがつくなら、先行組の中でも上位層にいる。3つ以下なら、「導入した」だけで止まっている可能性が高い。72.5%の”1年以内導入組”に入ることと、22.2%の”データ整備完了組”に入ることは、まったく別の話だというのが本記事の骨子だ。

先行組でも「使いこなせている」は少数派

今回の調査が突きつけるのは、一言でいえばこれだ。

「導入した」は出発点に過ぎない。

すでに走り出している先行組企業でさえ、9割が期待外れを経験し、経営インパクトを実感できているのは2割以下、データ整備が完了しているのは22.2%に過ぎない。これが2026年2月時点の、生成AI活用の偽らざる現実のようだ。

先行組に入れたことは素直に評価していい。ただし本当の競争は、その先の「22%側に入れるか否か」というステージで始まっている。データを整え、運用を設計し、経営インパクトへの道筋を引く…。この三つを同時に回せている企業が、2026年のAI活用における真の勝ち組になるはずだ。

「とりあえず入れました」は、実はスタートラインに立っただけだと言えそうだ。


本記事はSansan株式会社が2026年2月2〜3日に実施した調査(対象:生成AIツールをすでに活用している企業の導入・活用推進に関わる役員・管理職・担当者 計1,077名)の公表データをもとに構成しています。ROI事例の数値は参考値であり、導入効果は業種・業務・運用方法により異なります。

カテゴリ: AI活用
この記事を書いた人

Seita Namba

イグナイトbiz 編集長