ホンダ、今期最終赤字へ転落。北米でのEV開発中止とハイブリッド車(HEV)回帰

2026年3月12日、本田技研工業株式会社は四輪電動化戦略の見直しと、それに伴う2026年3月期通期連結業績予想の下方修正を発表しました。

2026年3月期 通期連結業績予想の修正

単位:億円(親会社の所有者に帰属する当期利益ほか)

営業利益
修正: △5,700 〜 △2,700
当初: 14,200
税引前利益
修正: △6,500 〜 △3,100
当初: 15,800
当期利益
修正: △6,900 〜 △4,200
当初: 10,000
当初予想 (2026/2/10)
修正予想 (2026/3/12)

※修正理由:北米EVモデルの開発中止および中国事業の減損等に伴う損失計上(最大2.5兆円の試算を含む)による。

また北米における EV 市場の鈍化を踏まえ、北米で生産予定であった一部の EV モデルの上市および開発
の中止などを決定。これを含めた四輪電動化戦略の見直しの結果、上記の EV モデル生産に利用予定であった有形固定資産・無形資産の除却損失および減損損失や、販売や開発中止に伴う追加支出に関する損失などを計上する見込みとなりました。

また、中国における競争激化などを背景とした回収可能性の見直しにより、中国の持分法で会計処理されている投資に対する減損損失なども発生する見込みだと発表されました。

北米でのEV開発中止と戦略転換の背景

ホンダはこれまで、カーボンニュートラルの実現に向けて、小型モビリティの領域においてEVが最適解であると考え、EV普及に向けて大きく舵を切っていました。しかし、今回の発表では、北米で生産予定だった一部EVモデルの発表および開発中止という厳しい決定を下しています。この見直しの背景には、事業環境の急激な変化がありました。

  • 北米市場の変化:米国におけるEV補助金の見直しや化石燃料規制の緩和などが進み、EV市場全体が鈍化しています。
  • 競争環境の激化:中国やアジア市場において、自動車の価値がハードウェアからソフトウェアへと移行しており、SDV(ソフトウェアデファインドビークル)領域などで強みを持つ新興EVメーカーが急速に台頭しています。
  • 収益性の悪化:米国での関税政策変更による既存ビジネスへの影響や、EVへのリソースシフトに伴うアジアでの商品競争力の低下により、四輪事業の収益性が悪化していました。

巨額の損失の内訳と業績予想の大幅下方修正の詳細

この戦略見直しは、業績に多大な影響を及ぼします。北米におけるEVモデル生産に利用予定であった資産の除却損失・減損損失、および追加支出などにより、2026年3月期の連結業績において8,200億円から1兆1,200億円の営業費用を計上する見込みです。加えて、中国における競争激化を背景とした投資への減損損失などにより、1,100億円から1,500億円の持分法による投資損失も発生します。次期以降の業績においても追加的な費用や損失が計上される可能性があり、当期の損失と合わせて最大で2兆5,000億円にのぼると試算されています。

これらを受け、2026年2月10日に公表されていた通期連結業績予想は大きく修正されました。3,600億円の黒字を見込んでいた当期利益は、一転して6,300億円から6,900億円の赤字へと下方修正されています。なお、配当予想についての変更は行われていません。

今後の方向性:HEVの強化と経営責任の明確化

今後の四輪事業について、ホンダは急激な環境変化へ対応するため、EVラインアップを縮小し、HEV(ハイブリッド車)モデルを強化する方針を示しました。主戦場である日本や米国に加え、市場拡大が見込まれるインドでの事業強化、およびアジアにおける次世代HEVモデルの上市などにより競争力向上を図ります。今後のEV化推進については、収益性や需要動向を見極めつつ、長期的な視点で柔軟に行うとしています。中長期戦略の再構築の詳細は、次期のしかるべきタイミングで発表される予定です。

また、今回の事態を踏まえ、三部敏宏代表執行役社長をはじめとする経営陣は役員報酬の一部を自主返上します。代表執行役は月度報酬の30%を3か月分返上し、業績連動報酬(STI)も不支給となるため、年間報酬額は基準額に対し25〜30%の減額となります。経営会議メンバーなどの関係役員も、月度報酬の20%を3か月分返上する措置が取られることになりました。

参考

カテゴリ: ビジネス
この記事を書いた人

Seita Namba

イグナイトbiz 編集長