次世代Grokは Chat-GPTを超えるか?

Grok V9-Medium、トレーニング完了!

イーロン・マスクが5月25日に投稿した内容は短かったが、数字のインパクトそれなりに大きいものだった。

xAIの次世代基盤モデル「Grok V9-Medium」のトレーニングが完了し、パラメータ数は1.5兆。現在Grokの本番トラフィックをすべて担っているV8-Smallの3倍のパラメーターサイズだ。ファインチューニングが進行中で、強化学習は数日以内に開始。公開は2〜3週間後とされており、内部評価の結果も「良好」と公言している。

イーロンマスクのポスト

トリリオン級のパラメータを持つLLMのトレーニングができる企業は非常に限られている。

コーディングに強いことを目指してモデルであることに加え、パラメータサイズだけがLLMの性能を決めるものではないということを踏まえても、1.5Tまで大きくできたという事実は、xAIの開発チームとしての体力が『フロンティアモデルで競い合うOpenAIやANTHROPIC、Googleと近い』ということを表していると筆者は感じる。

xAIのコーディングAI戦略と、Colossusという武器

今回のモデルで目を引くのは、データ戦略だ。追加トレーニングにCursorのデータが大量に投入されており、今後もさらに加えられる予定という。Cursorはエンジニアに広く使われているAIコーディングアシスタントで、このデータを意識的に取り込んでいることはxAIがコーディング性能の強化を明確に狙っていることを示している。マスク自身は「難しいコーディングタスクで特に大幅な改善が見込まれる」とポストしている。

ただ、現状の立ち位置は一歩引いて見る必要がある。GPT-5.5はHumanity’s Last Examで88.7%を記録しているのに対し、xAIが自己申告しているGrok 4の同スコアは72〜75%にとどまる。埋めなければならない差はまだある。V9-Mediumがその数字をどこまで動かすかが、次世代モデル最大の見どころだろう。

Colossus 2 スペックより「速さ」が強み

モデルの話と切り離せないのがインフラだ。xAIのトレーニングクラスターColossusは、H100が15万台、H200が5万台、GB200が3万台で現在約23万GPUを抱える。NVIDIA Spectrum-X Ethernetを採用しており、従来のEthernetが60%前後のスループットにとどまるのに対して95%を実現している。

スペックより注目すべきは建設速度だ。Colossus 1は122日で完成し、その後92日でGPU数を倍増させた。OracleやCrusoe、OpenAIが同規模のインフラ整備に15ヶ月を要したのに対して、Colossus 2の第一フェーズはxAIが6ヶ月で完了させた。

その勢いで拡張は続いている。2025年12月にはマスクがColossus 2の隣に3棟目の取得を発表し、サイト全体の電力容量は2GWに達した。GPU総数は55万5,000台で、投資額は約180億ドル。単一サイトとして世界最大規模の AI施設となっている。

Colossus 2のフェーズ完成後については、単一トレーニングクラスターとしての総データセンター容量がAnthropicやMetaを超えると試算されている。xAIがAIインフラの面において、抜きんでている存在であることは注目しておいた方がよさそうだ。

コーディング市場への狙い

今回のV9-MediumはxAIの「Grok Build」とも連動している。マスクは4月の時点で、AIコーディングエージェントのGrok BuildがClaude Opus 4.6に近づき、やがて超えるという見方を示していた。かなりポジショントークだなぁと筆者は感じていたが、V9-Mediumのリリースは、その言葉の達成度合いを測る最初の機会になりそうだ。

なお、旧来のV8-Small(0.5Tモデル)はオープンソースとして年内に公開される予定だ。外部の開発者がxAIのアーキテクチャを直接触れる場が生まれることで、エコシステムの広がりにもつながるかもしれない。

フロンティアモデルとの差を詰めようとする姿勢は明確だ。Cursorデータによるコーディング特化の戦略、RLへの本格投資、そしてColossusという計算基盤。一つ一つは既存プレイヤーの取り組みと重なる部分も多いが、インフラを自前で、この速度で積み上げているのがxAIの今のやり方だ。V9-Mediumの実際の性能が、6月中旬にはっきりする。

他社と比べて、設立後 3年という若いチームのxAI。次のモデルでどこまでやってくれるか、どこまでキャッチアップしてくれるか楽しみだ。

カテゴリ: AI・人工知能
この記事を書いた人
Seita Namba
イグナイトbiz 編集長